2002年に「精神分裂病」から「統合失調症」と病名が変更された。

発症年齢、頻度

発症頻度:0.7~0.8%(患者数は79.5万人と推計。うち18.7万人が入院患者)
発症年代:15~45歳(ピークは10代後半〜20代。まれに10歳前後、初老期に発症する場合がある)
男女比:男女差はないとされてきたが、男:女=1.4:1と男性がやや多いという報告がある。

病因

生物学的成因論、心理社会的成因論、生物学的・心理社会的複合論(脆弱性・ストレス仮説)等あるが、不明。発病には脳内のドーパミン神経伝達過剰が関係しているのではないかというドーパミン仮説が有力。

症状

症状は、大きく陽性症状と陰性症状に分けることができる。

陽性症状(幻覚、妄想、滅裂思考など)

急性期に多く、抗精神病薬が効きやすい。

◎思考障害
○思路の障害

話がまとまりにくい(連合弛緩、滅裂思考)、自分だけの用語を作る(言語新作)、考えのつながりが途切れる(思考途絶)、自分の考えが抜き取られてると述べる(思考奪取)。

○妄想

思考の内容の異常で、明らかに誤った内容の考えを深く信じ込んで訂正不能の状態を指す。
一次妄想(了解不能で根拠を持たない妄想)と二次妄想(何かしらの経験とつながりがある等の了解可能な妄想)に分類できる。

一次妄想の種類
・妄想気分(何か起きそうな不気味な感じ)
・妄想知覚(知覚したことに対し全く意味関連のない内容の妄想を確信)
・妄想着想(知覚とは無関係に妄想が突然浮かび上がる)

妄想の内容により…
①被害妄想(追跡妄想、注察妄想、被毒妄想、盗難妄想)
②関係妄想(周囲の出来事が自分に関連しているという妄想)
③誇大妄想(血統妄想、宗教妄想、恋愛妄想)

◎幻覚

実際には存在しないものをまるで存在するかのように知覚する、知覚の障害。幻聴、体感幻覚、幻臭、幻触など。

○幻聴

現実には存在しない音が聞こえてくるという聴覚領域の幻覚。単純な物音よりも人の話し声(幻声)が多く、内容としては、患者自身への悪口、非難、批評、強迫、噂などが多い。聞こえる場所は耳、胸や腹の中、電波で伝わってくる等様々。幻聴に伴い、独語や空笑などの症状を呈すこともある。

○体感幻覚

身体に奇妙な感じが生じる。「身体にピリピリ電気がかけられる」「脳が溶けて脊髄に流れ込む」などと訴える。

○幻視

視覚面の幻覚。統合失調症ではあまりみられない症状。

◎自我意識(自分自身を認識する意識)障害
○能動意識の障害

・自分がしている感じがしない(離人症)
・自分の行動や考えが誰かに操られている(させれら体験)
・自分の考えが誰かに引き抜かれる(思考奪取)
・自分の考えが口に出さなくても周囲に伝わる(思考伝播)
・自分の頭に考えが入れられる(思考吹入)
・自分の意識に反して、ある観念が現れ抑えられない(強迫観念)

○単一性の意識障害

・自分が2つに分裂し、自分をもう1つの自分が眺めている(二重身)
・自分の中の他の自分が自分の意志を邪魔する(させられ体験)
・狐や神がのりうつった(憑依妄想)

○同一性の障害

・自分は過去の自分と全く別と感じ、2つの異なった人格が別に現れる(交代格)。

○外界や他人に対する意識の障害

・自分と外界、自分と他人の区別が不明瞭になる。

陰性症状(感情の鈍麻、思考の貧困、意欲・発動性の低下、快感の消失、社会的引きこもりなど)

慢性期に目立つようになり、抗精神病薬はあまり有効ではない。

○感情の障害

・感情疎通性の減退…他人への感情的配慮、共感性が失われて自然な感情交流が失われる。
・感情鈍麻(感情の平板化)…生き生きとした感情の発露が乏しくなる。物理的なものに対する感覚も鈍麻することがある。
・感情両価性…同一の対象に対して相反する感情が同時に起こる状態。

○意欲障害

特に慢性期に自発性が減退し、無為、茫乎として1日を過ごすような状態になる。全般的な意欲が低下し、自閉的になっていく。

○自閉性

自分の世界に閉じこもって、周囲とのコミュニケーションを断つなど。

○思考障害

・思考過程の異常(思考の道筋や脈絡の障害)…思考途絶、思考制止、思考散乱(滅裂思考)、観念奔逸、思考保続、思考迂遠
・思考内容の異常…妄想など

○抑うつ、不安

病気の経過中、不安を生じたり、抑うつ的になることがよくある。例えば急性期の精神状態が軽快した後、急に元気がなくなる等。自殺に注意が必要。

○認知機能障害

①注意障害
②実行機能(遂行機能)障害
③記憶障害:短期記憶と手続き記憶は保たれるが、宣言的記憶(エピソード記憶、意味記憶)に障害があるという特徴がある

病型

○破瓜型(解体型)

思春期に徐々に発病。感情鈍麻・平板化、自発性減退などの陰性症状が中心で、幻覚妄想はあまり顕著ではなく断片的、不動的であることが多い。慢性的に経過し、やがて無為、自閉に至ることがある。

○妄想型

20~30歳代に発症することが多く、妄想、幻覚が主症状。比較的恒常的な妄想をもち、妄想体系まで生じることがある。一方、意欲・感情の障害、行動の乱れ等は比較的少なく、薬物療法が有効で、その点で予後は良好とされる。

○緊張型

10代後半から20代前半に好発。急性発症のことが多く、精神運動興奮または緊張病性昏迷(亜昏迷が主)が中心症状。その他に緊張病症候群(カタレプシー、反響症状、常同症、衒奇、拒絶症)という症状がみられることがある。比較的急速に収まるが、再発も多い。

○単純型

破瓜型よりもさらに陰性症状が中心で幻覚、妄想を欠く。

○鑑別不能型

上記4分類に明確に分類出来ないタイプ。

経過と予後

多くの場合、幻覚、妄想などの陽性症状で始まり、抗精神病薬による治療が行われ、急性期の陽性症状は消失していく。多くの場合はその直後にエネルギーの枯渇したような精神病後抑うつ状態となる。やがてその状況から徐々に回復していくが、正常時のレベルまで回復することは困難で、陰性症状が目立つ残遺状態を長期にわたって残すことが多い。
現在の治療法による予後は、寛解率が2、3割、不完全寛解と軽快に至るものが6、7割、不変あるいは進行性に憎悪し予後が不良なものが1割程度とされている。

治療

薬物療法と心理療法を中心に行われる。

○薬物療法

抗精神病薬を治療薬として使用。
急性期で強い興奮状態、病識がなく治療を拒絶する場合は、入院および定型薬を注射で使用しなければならない場合もあるが、症状が軽快すれば在宅治療(服薬は継続)に切り替え、早期に退院となる場合が多い。
急性期の症状が軽快しても、再発予防のために長期間服薬を継続しなければならないことが多い。(維持療法)
アドヒアランス(コンプライアンス)が悪く再発(怠薬→症状が再燃)する場合には、特効性注射剤(デポ剤)を4週間に1回、筋肉注射で治療を行うこともある。

○心理療法

精神(心理)療法…支持的精神療法が主体。

統合失調症の生活障害

社会機能障害(生活障害、生活のしづらさ)を伴うことがある。
他に対人関係に消極的になったり、場合によっては作業能力や社会的問題解決能力(何らかの解決を求められる問題に直面した場合の混乱しやすさ)などがみられることもある。薬物療法や心理療法と並行して、リハビリテーション療法の有効性が認められている。

社会復帰(リハビリテーション)療法

①社会療法、環境療法
社会的な日常的事柄全ての面に働きかけることにより、社会生活への適応能力の回復が目的。
→日常生活指導、レクリエーション療法、作業療法等

②生活技能訓練(SST)
人間関係における視線、表情、姿勢のような基本的な態度から、日常生活で出会う問題の対処法などについて練習し、好ましい生活技能を取得するもので、統合失調症の生活障害の改善に使用。

③デイケア
病院、精神保健センター、保健所、クリニック等で実施。1週間のうち数日間、昼間(あるいは夕方から夜間)の時間帯を過ごし、グループミーティング、スポーツ、創作活動、料理等のプログラムに参加。

④グループホーム、就労支援事業所(作業所)、地域生活支援センターなどの社会資源の利用。

⑤薬剤師による服薬指導、看護師や精神保健福祉士・作業療法士等による訪問看護、就労支援等

 

<参考・引用文献>
渡辺雅之(著)(2007). 専門医がやさしく語る はじめての精神医学 株式会社 中山書店
上島国利(監修)(2011). これならわかる! 精神医学 株式会社ナツメ社

 

カウンセラーからのメッセージ

現在のところ統合失調症の治療は、病院における薬物療法が主な治療法とされています。
(特に急性期には入院治療を必要とする場合もあります)

並行して、メンタル的なサポート(カウンセリングなど)や環境的なサポート(社会資源の有効活用など)を、ご家族や専門家から受けることで、「自分らしく生きる」ことに向かうことができると考えます。

※ご状況に応じて医療機関へのご相談を提案させていただくこともございます。
※※通院中の方は、主治医にカウンセリングの利用についてご相談の上、ご利用を検討くださいませ。主治医の許可がない場合、ご対応できない場合がございますので、ご了承くださいませ。

 

当相談室では、
・心理カウンセラーとして…メンタル面のサポート、心理療法、カウンセリング等
・精神保健福祉士として…社会資源の有効活用、環境面のアドバイス等
提供させていただいております。

ご家族の方へ

ご本人様を支えているご家族の方々も、様々な悩みを抱えていることが多いのかもしれません。
他の障害や病気のように、症状が目に見えるわけではなく、個人差もとても大きく、ご対応の仕方にもそれぞれの方にあわせた配慮を要します。
「なかなか相談できる人がいない」と悩みを抱え込まれているご家族のお声を聴くことも多いです。
ご自身のケアや休養もどうか大切にしてくださいますように。

当相談室では、ご本人様へのカウンセリングに加えて、ご家族に対するカウンセリングやメンタル面のサポート、アドバイス等をさせていただくことも可能です。

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