気分障害とは

内因性精神障害の代表的疾患。感情、気分が高揚する躁状態と、反対に抑制されるうつ状態の2つの病相がある。
躁とうつの両方を繰り返すものを双極型(双極性障害)といい、うつだけを繰り返すものを単極型と呼ぶ。
病相の間の中間期は正常な状態であって、進行性の病像は生じないし、人格変化や欠陥状態におちいることはない。

原因

遺伝的素因と環境要因の複合と言われている。
双極型は単極型よりも遺伝負因が高く、単極型は遺伝に加えてストレス等の環境要因が重要。
原因遺伝子の発見はされていない。
病前性格との関連が指摘されており、発症しやすい性格としてメランコリー親和型(秩序を重視し、他者に尽くす傾向)が知られている。

誘因

うつ病はストレスや喪失体験(肉親の死亡、事業の失敗等)が誘因となり、発症することが多い。喪失体験以外には、生活の大きな変化、責任の急増(昇進、出産等)、慣れた環境から新規の環境への移転(引っ越し等)などがうつ病を誘発するきっかけになることがある。
うつ病エピソードも躁病エピソードも心理的にこれといった誘因もなく発病することもあり、特に双極型はその傾向がある。

 

◎うつ病

症状

抑うつ気分(憂鬱、気分が沈む、鬱陶しいなどど表現される感情)、悲哀感、絶望感などが生じる。
さらに思考制止(考えが浮かばない、頭の回転が鈍い、集中困難、決断力低下、能率の停滞など)という症状が出て、口数が減り、話す速度も遅れがちになる。また悲観的に物事を考えるようになる。
さらに抑うつ気分が元になり、二次妄想(微小妄想、罪業妄想、貧困妄想、心気妄想など)を生じることもある。
最重度のまれなうつ病にコタール症候群(初老期に出現しやすく、否定妄想中心)がある。
また多くのうつ病患者は自殺念慮を生じ、自殺してしまうことがある。
うつ病ではまた活動性が低下し、精神運動制止(動作が緩慢、意欲低下等)という症状が出現し、あらゆる出来事への興味関心が低下することがうつ病の特徴と言える。さらに強度の制止では抑うつ性昏迷(意欲が極度に低下し、行動が全くない状態)に陥ることもある。
他方、不安感や焦燥感が強く見られる人もいる。

身体症状としては、睡眠障害、易疲労感、食欲減退、性欲減退、便秘や動悸、各種疼痛などがみられる。
また、日内変動症状(朝方うつ症状が最も悪く、夕方に改善)が生じることが多い。
軽いうつ病では病識があるが、重症で妄想が出るような場合は病識はなくなる。

発症年齢、頻度

生涯有病率(日本):3〜7%(厚労省HPより)
男女比:男性の方が1.5~2倍多い
年齢層:各年齢に広く発症。平均24〜27歳。

 

◎躁病

躁状態では気分は爽快となり、態度は無遠慮になりがち。物事が自分の思いのままにならないと易怒的になることもある。
また、思考の進みが早く、多弁になる。観念奔逸(話の筋が脱線しやすい)という症状が出る。
注意散漫になり、注意が集中せずに別の事柄に気持ちが生きやすくなる。(=注意伝導性が亢進している)
また楽天的な思考内容となり、誇大妄想(自分は天才で大発明をした等)にまで至ることがある。
活動性が亢進し、多動となり、人を訪問したり、お節介をやいたりするケースもある。
浪費が多くなり不必要なものを買い込んだり、気前がよくなったりすることがある。
行為心迫(行動量が増え、様々なことに手を付けては、やり散らかして別の行動に移る)もみられる。

一方、身体的には睡眠時間の短縮し、性的関心が高まる。行動過多であっても疲労感を感じにくい。
病識は一般的にに欠如しており、治療・入院には抵抗が強いことが多い。

 

◎双極性障害(躁鬱病)

抑うつ状態と躁状態を繰り返す。躁状態の程度により、双極Ⅰ型障害(うつ状態に加え、激しい躁状態が起こる)、双極Ⅱ型障害(うつ状態に加え、軽躁状態が起こる)に分類される。原因は不明。

症状

躁状態:家庭や仕事に重大な支障をきたし、人生に大きな傷跡を残してしまいかねないため、入院が必要になるほどの激しい状態。

軽躁状態:周囲から見ても明らかに気分が高揚していて、眠らなくても平気で、ふだんより調子がよく、仕事もはかどるけれど、本人も周囲の人もそれほどは困らない程度の状態。

うつ状態:「抑うつ気分」と、すべてのことに全く興味をもてなくなり、何をしても楽しいとか嬉しいという気分がもてなくなる「興味・喜びの喪失」の2つが、うつ状態の中核症状で、これらつのうち少なくともひとつ症状があり、これらを含めて、早朝覚醒、食欲の減退または亢進、体重の増減、疲れやすい、やる気が出ない、自責感、自殺念慮といった様々なうつ状態の症状のうち、5つ以上が2週間以上毎日出ている状態。
双極性障害では、最初の病相(うつ状態あるいは躁状態)から、次の病相まで、5年くらいの間隔がある。躁やうつが治まっている期間は健常な状態になるが、この期間に服薬をしないと、多くの場合は繰り返し躁状態やうつ状態が起こる。治療がきちんとなされていないと、病相の間隔はだんだん短くなっていき、急速交代型(年間に4回以上の病相がある)へと移行し、薬も効きにくくなっていく。
双極性障害で繰り返される躁状態の期間とうつ状態の期間を比較すると、うつ状態の期間のほうが長いことが多い。

発症年齢、頻度

男女比:認められない
年齢層:95%が20代半ばに発症
有病率:1年間のうちに0.5%の人がかかる

 

◎非定型うつ病

特定の抗うつ薬(MAO阻害薬)がよく効き、気分反応性(自分にとって好ましいことがあると一時的にでも気分が良くなる)、過眠、過食、鉛様麻痺(体が鉛の重りを付けたように重く感じ、思うように動けない状態)、拒絶過敏性(他人からの拒絶や批判に非常に過敏になる)などの特徴がある。
女性の方が1.2~2.5倍多く、若年層に多い。

 

◎気分変調性障害

うつ病の診断基準には当てはまらないものの、1日中軽い抑うつ気分があり、2年以上続く場合。落ち込みよりイライラ感を訴えることもある。

 

◎気分循環性障害

明らかな躁状態と言えないほどの気分の高揚と、ごく軽い抑うつ状態を2年以上繰り返す。双極性障害の予備軍とも言われる。

◎他に…仮面うつ病(精神症状より身体的な症状が目立つ)、荷卸しうつ病(昇進や目標を達成したことをきっかけに発症)、季節性うつ病(冬などの特定の季節に抑うつ気分が現れる)、難治性うつ病(治療を受けてもなかなか改善せず再発を繰り返す)など。

 

治療

◎躁病

薬物療法が治療の中心となっている。炭酸リチウム、カルバマゼピン、バルブロ酸ナトリウムなどの気分安定薬(抗躁薬)を使用。
再発することも多いので、症状が安定しても次の病相再発予防のため気分安定薬を継続して服用する。重症の場合には、入院治療が必要なこともある。

◎うつ病

薬物療法
抗うつ薬を使用。(効果が出るまで10日~2週間程度)
三環系抗うつ薬(イミプラミン、アミトリプチリン等)を従来は使用していたが、副作用(口渇、便秘、排尿障害、起立性低血圧等)が多いため、副作用の少ないSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を使用されることが多くなった。

休養
まずは心理的負担の軽減を図り、十分な休養が必要。状態に応じて入院治療も。

精神(心理)療法
支持的精神療法:うつ病の病気についての説明、必ず回復することまた明確な脳の病であり怠け病等ではないことを、本人にも周囲にも理解してもらうことが必要。人生の重大な決断は症状が改善するまで延期することを促し(決断力の低下、悲観的になりがちなため)、自殺念慮に注意し、自殺を選択しないよう約束することも大切。また責任感が強く自分で抱え込む傾向があるので、時には人に任せたり断ることが必要なことも説明。回復までに時間がかかることもあるため、焦らないことが肝要。患者の苦悩をそのまま受容し、理解しようとする努力が必要。

認知療法・認知行動療法:自己や症状について否定的に考えてしまう認知過程が抑うつを憎悪させているので、この認知過程を修正することでうつ症状の改善を図る。

対人関係療法:うつ病に対する短期精神療法。この病気は患者と重要な他者(家族など)との間の対人関係によって大きな影響を受けるという事実のもとに、その重要な他者との現在の関係に焦点をあてる治療法。患者の対人関係の質を改善するために実施。

 

<参考・引用文献>
渡辺雅之(著)(2007). 専門医がやさしく語る はじめての精神医学 株式会社 中山書店
上島国利(監修)(2011). これならわかる! 精神医学 株式会社ナツメ社

 

カウンセラーからのメッセージ

精神科病院における治療を受けながら、当相談室のカウンセリングを併用されているクライエント様もいらっしゃいます。

カウンセリングを通して、ご自身の心と向き合うことで、「考え方のくせ」に気づいたり、より生き生きと軽やかに生きるための選択肢を増やしていくことができる場合もあります。

「自分に自信がない」、「自己評価が低い」ことで悩まれている方々には、カウンセリングを通して、自己否定的な視点を修正していく、または周りと比較する習慣から脱するためのサポートをさせていただくこともできます。

 

または精神的な面だけではなく、現在の生活習慣を振り返りながら、栄養学的な視点でカウンセリングをさせていただくことで、心身ともに健やかで過ごすためのアドバイス等をお伝えさせていただくこともできます。

精神保健福祉士として、それぞれの疾患の方がご利用できるサービス(社会資源、就労等)についてお伝えすることもできます。

 

※ご状況に応じて医療機関へのご相談を提案させていただくこともございます。
※※通院中の方は、主治医にカウンセリングの利用についてご相談の上、ご利用を検討くださいませ。主治医の許可がない場合、ご対応できない場合がございますので、ご了承くださいませ。
※※※診断や薬物療法はご提供できませんので、ご了承くださいませ。

 

ご家族の方へ

ご本人様のお辛い状況を支えているご家族様もお辛い気持ちを抱えていらっしゃる方々を多くお会いしてきました。
サポートする皆様ご自身がご健康であること、またそれはご本人様にも大きく影響することだと思います。

カウンセリングを通して、ご自身の辛いお気持ちを少しでも軽くしていただくこと、またご本人様への接し方等でお悩みの場合にも、当相談室をご活用いただければ幸いです。

 

ハスの花

 

 

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